不動産の見方

不動産登記はなぜ必要か(対抗力の具体例)

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皆さんもマイホームなどの不動産を購入すれば不動産登記を行うことになります。
では、不動産を取得しても登記しなかった場合はどうなるのでしょうか?

民法の条文では不動産(土地など)の売買契約を締結した場合、たとえ登記をしなかった(あるいは登記前であった)としても土地に対する所有権は移転しますので、土地の購入者は登記なしでも土地を有効に取得することができます(民法176条参照)
ただし、この土地がすでに自分のものであると第三者に主張するためには、不動産登記をした後でなければなりません(これを対抗力といいます。民法177条参照)。

つまり、不動産移転に関する登記を怠った場合、不動産の所有権を取得することはできますが、この権利を第三者に主張することはできないということになります。

具体例で考えてみましょう

より具体的に考えてみましょう。

Aさんはマイホーム購入し、かつその代金も支払い、領収証も受け取りました。
しかし、突然Bさんが表れて「自分もこの家を購入した」と主張してきました。どうやら売主が同じ家をAさんとBさんの両方に販売して両方から代金を受け取ったようです(二重売買)。

AさんとBさんはお互いが売主と交わした契約書や領収書などを見比べました。するとAさんの売買契約日(1月1日)の方がBさんの売買契約日(2月1日)より1か月ほど早いことが分かりました。
ただしBさんはしっかり者で、マイホームを購入したことについての不動産登記を2月2日に済ませていました(Aさんはまだ登記が完了していません)。
この場合、AさんとBさんはどちらがマイホームを手に入れることができるでしょうか?

AさんとBさんのマイホームに関する関係
Aさん 売買契約日は1月1日(代金の支払いもBさんよりも先)
登記はまだ行っていなかった。
Bさん 売買契約日は2月1日
登記は2月2日に行っている

考え方

この優先順位を考えるうえでは、まず不動産登記がなぜ必要なのかを考える必要があります。

不動産登記とは、不動産に関する情報を誰でも見ることができる不動産登記簿に記載してこれを一般公開することにより、不動産取引の安全と円滑をはかる役割をはたしています。この役割をより効果的なものとするため不動産登記には上記の対抗力が認められることになります(登記しなければ第三者に権利を主張できない)。

上記の例でいうと、Aさんは売主との間でマイホームの売買契約を済ませ、代金もすでに支払っていますが登記は後回しにしています。いっぽうBさんは売買契約はAさんより後になっていますが、Aさんより先に登記を済ませています。

仮にAさんが1月中に不動産を取得したことについて登記を済ませておけば、Bさんは不動産の所有者は売主ではなくAさんであるということを知ることができたはずです。Bさんはマイホームを購入するにあたり登記を確認して(つまり不動産の所有者は売主であると信頼して)購入したかもしれません。であれば、登記制度の趣旨から考えもこの信頼は保護されるべきです。

したがって、AさんBさんが売主からマイホームを購入した売買契約はともに有効なものとなりますが、登記を怠ったAさんは先に登記を行ったBさんに権利を主張できなくなりますので、結局Aさんはマイホームを手に入れることができなくなり、マイホームはBさんのものとなります(Aさんは売主に代金の返還や損害賠償などを求めることになります)。

このようなことにならないためにも、不動産に関する取引を行った場合にはいち早く登記をすることが求められることになります。

(参照にした情報:不動産登記法第1条、法務省ホームページ-不動産登記のABC「http://www.moj.go.jp/MINJI/minji02.html」など参照)。

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